2024.10.02

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顕彰・研究助成

Awards and Grants

大伴家持文学賞・高志の国詩歌賞とは

富山県では、万葉集の代表的歌人であり、国守として赴任した越中で数々の秀歌を詠んだ、大伴家持(718~785年)の生誕1300年を記念し、各種の記念事業を実施しています。
その主要事業として、世界のすぐれた詩人を顕彰する「大伴家持文学賞」及び富山県ゆかりのすぐれた若い世代の詩人を顕彰する「高志の国詩歌賞」を2017年に創設しました。
国内外の人々の心豊かな人生の創造に寄与することを目的としています。

大伴家持文学賞

  • 第3回(2023)

    受賞者
    ジャン=リュック・ステンメッツ
    主要著書
    Et pendant ce temps-là...(そしてその間に)

    プロフィール

    ジャン=リュック・ステンメッツ
    Jean-Luc Steinmetz
    ナント大学名誉教授
    フランス出身
    82歳

    1940年トゥ―ル市の生まれ。ナント大学名誉教授。15歳のころから詩を書きはじめ、『交差するこだま』L’Écho traversé(1968年)、『朝への自在な落下』Chute libre dans le matin(1994年)、『そしてその間に/十月の日本』Et pendant ce temps-là, suivi de Japon d’octobre(2013年)、『黙示録のほうへ』Vers l’Apocalypse(2022年)など、15 冊ほどの詩集を上梓している。「十月の日本」は、東北大震災の7カ月後に、日本学術振興会の招きで清子(きよこ)夫人とともに訪れた傷痕深い日本の極私的スケッチであるが、また長年育んできた日本のイメージの表現でもある。2008年、『外観は虎斑めいて』Le Jeu tigré des apparences でアカデミー・フランセーズの「ポール・ヴェルレーヌ賞」を受賞、またその時点での詩業全体に対して「文人協会詩歌大賞」を授与された。多数の評論、旅行記を著しているほか重要詩人の伝記の著者としても知られ、1991年『アルチュール・ランボー伝、不在現前のはざまで』(邦訳1999年)でアカデミー・フランセーズ賞を受賞、また1998年、『ステファヌ・マラルメ、絶対と日々』(邦訳2004年)で道徳政治アカデミーから「ピエール=ジョルジュ・カステックス賞」を、アカデミー・フランセーズから「アンリ・モンドール賞」を授与された。これまでに数度来日し、そのつど日本の主要大学で一連の講演を行なっている。

    選考理由

    今回、125名(29の国と地域)の候補者の中から、ジャン=リュック・ステンメッツを選考した。ジャン=リュック・ステンメッツは、数多くの充実した詩集があり、今日のフランス詩壇を代表する存在である。日本人女性を伴侶とし、日本滞在、日本的美学から受けた霊感を自身の詩の創造の糧としている。そして、その作品は平易かつ密度の濃い言葉で紡がれた結晶であり、第3回の本賞にふさわしいと評価された。

  • 第2回(2021)

    受賞者
    北島(ペイタオ)
    主要著書
    北島(ペイタオ)詩集

    プロフィール

    北島(ペイタオ)
    詩人
    中国出身
    71歳

    1949年、北京生まれ。本名 趙振開。1978年、北京で友人たちとともに文学雑誌「今天」(今日という意味)を発刊。1987年以来、ヨーロッパ、アメリカ、香港などの多くの大学で教鞭をとる。北島の作品は30か国の言語に翻訳されている。ブラウン大学名誉博士、香港中文大学文学院名誉教授。国際ペンクラブ・バーバラゴールドスミス自由執筆賞、スウェーデン国際ペンクラブ文学賞、アメリカグッゲンハイム賞、マケドニアのストルガ詩の夕べの最高栄誉賞である金冠賞などを受賞。アメリカ芸術アカデミー名誉会員。2009年には、現在アジアで最も影響力のある国際詩歌祭である香港国際詩歌の夕べを創始した。2018年には香港詩歌祭財団を創設した。

    選考理由

    今回、109名(24の国と地域)の候補者の中から、北島を選考した。北島は、2015年に詩の分野で最も権威のある「ストルガ詩の夕べ金冠賞」を受賞するとともに、ノーベル文学賞の候補に名前が挙げられるなど、国際的に高い評価と注目を得ている詩人である。 北島は、現代中国の激動の中、イデオロギー性のある詩作から出発したが、近年の作品では、その過去の憤りを強い魂によってパーソナルなポエジーへと昇華し、精神の表現者へと到達している。『北島(ペイタオ)詩集』(是永駿編・訳、書肆山田、2009年)では、その詩の円熟の経過をたどることができる。 この詩集にも見られるように、近作の「冬を過ごす」では、政治的な抑圧の中にあった詩人が、詩の魂に未来の光を見る。そのことによって、詩人が背負う歴史や風土を超えて、人類の表現者へと達している点が評価された。

  • 第1回(2019)

    受賞者
    マイケル・ロングリー
    主要著書
    日本の天気(The Weather in Japan)

    プロフィール

    マイケル・ロングリー
    Michael Longley
    詩人
    イギリス(北アイルランド)出身
    78歳

    北アイルランドのベルファストで1939年に生まれる。北アイルランド芸術文化振興会に20年間勤務し、地方における文学と伝統音楽の振興に携わる。11冊の詩集を出版しており、Collected Poemsは2006年に発表された。最新の詩集であるAngel Hillは、Sidelines: Selected Prose 1962-2015と同じく、2017年に出された。詩集The Stairwell (2014年)は、グリフィン・インターナショナル賞を受賞。2001年にクイーンズ金メダルを授与され、2003年にはウィルフレッド・オーエン賞を受賞。さらに、ウィットブレッド賞、ホーソーンデン賞、T.S.エリオット賞を受賞している。2015年に、ベルファスト名誉市民に選ばれ、2010年に大英帝国勲章司令官を与えられた。2007年から2010年までアイルランド詩学会会長を務めた。2017年に国際ペンクラブ・ピンター賞を受賞。1991年に日本を訪れ、日本の芸術文化に感銘を受けた経験が、詩作に影響を与え続けている。代表作の一つに詩集『日本の天気』がある。

    選考理由

    数多くの国際的な文学賞を受賞した現代アイルランド文学における代表的詩人であり、日本の短詩型文学からインスパイアされた英詩のモダニズムとの結合によって独自の境地を開いている。さらに美しい言葉が抒情的、音楽的であると同時に、冷静な観察眼とエモーションとをもって、生きることの孤独や連帯といった普遍的なテーマをうたう詩人として、世界に周知されている。選考委員会では、ロングリー氏の業績を高く評価し、「選考時点で世界最高の詩人を顕彰する」ことを目標とする本賞の受賞者として決定した。彼の詩の、日本語における紹介は必ずしも多いといえないこの状況に向けても本賞の決定が担う意義は大きい。

高志の国詩歌賞

  • 第3回(2023)

    受賞者
    堀田 季何(ほった きか)
    受賞対象作品
    人類の午後

    プロフィール

    堀田 季何(ほった きか)
    文芸家
    47歳

    俳誌「楽園」主宰、歌誌「短歌」同人。俳句により、芸術選奨文部科学大臣新人賞、現代俳 句協会賞、芝不器男俳句新人賞齋藤愼爾奨励賞、短歌により、日本歌人クラブ東京ブロック 優良歌集賞、石川啄木賞。句集『亞剌比亞』・『星貌』・『人類の午後』、歌集『惑亂』、著書『俳 句ミーツ短歌』、共著多数。現代俳句協会理事、国際俳句協会理事、現代歌人協会会員、日本 歌人クラブ会員、日本文藝家協会会員。詩歌を中心に多言語多形式で執筆、国内外で文芸活 動を行う。富山県内での地域振興活動にも携わっている。

    選考理由

    対象作品の句集『人類の午後』において、地球規模の問題、社会的課題に向き合い、こうし た問題に対して果敢に創作活動を行う堀田氏の射程の広さが高く評価された。すでに全国規 模の大きな賞を受賞済みであるが、今後ますますの活躍が期待される。

  • 第2回(2021)

    受賞者
    笠木 拓(かさぎ たく)
    受賞対象作品
    はるかカーテンコールまで

    プロフィール

    笠木 拓(かさぎ たく)
    歌人
    新潟県(糸魚川市)出身
    33歳

    1987年生まれ。新潟県糸魚川市出身、富山市在住。2005年より作歌を始める。 2006年、「京大短歌」に入会、2014年まで在籍。現在、「遠泳」同人。 2012年、第58回角川短歌賞(佳作)を受賞。2018年、第6回現代短歌社賞次席。2019年、第一歌集『はるかカーテンコールまで』を刊行。

    選考理由

    対象作品『はるかカーテンコールまで』は、大都市圏の生活者にはないポエジーを持ちながら、2020年代のグローバル社会の中で傷つかざるを得ない魂への祈りと、ジェンダー等の問題への言及、内面の追及が合致した、現代的・社会的な作品と言える。  この受賞が、富山県在住の可能性ある新人にとって、今後のさらなる活躍の後押しとなるとともに、本賞や本県の取り組みの意義が全国へ発信されることも期待できる。

  • 第1回(2019)

    受賞者
    山田 航(やまだ わたる)
    受賞対象作品
    水に沈む羊

    プロフィール

    山田 航(やまだ わたる)
    歌人
    北海道(札幌市)出身
    34歳

    1983年生まれ。北海道札幌市東区出身・在住。曽祖父が富山県小矢部市出身。 立命館大学法学部卒業。北海学園大学大学院文学研究科修士課程修了。短歌誌「かばん」「pool」所属。 2009年、「夏の曲馬団」で第55回角川短歌賞、「樹木を詠むという思想」で第27回現代短歌評論賞を受賞。2012年、第1歌集『さよならバグ・チルドレン』を刊行し、同年、同歌集で第27回北海道新聞短歌賞、翌2013年、第57回現代歌人協会賞を受賞。2014年、第42回札幌市文化奨励賞を受賞。2016年、第2歌集『水に沈む羊』を刊行。 このほか著書に、アンソロジー『桜前線開架宣言 Born after 1970現代短歌日本代表』(2015年)、エッセイ『ことばおてだまジャグリング』(2016年)などがある。 2017年より『野性時代』(角川書店)「野性歌壇」選者。

    選考理由

    対象作品『水に沈む羊』は、構成力、虚構力が非常に高く、一気に読ませる力があり、一冊の歌集としての重厚感がある。ニュータウン、いじめ、不妊などの今日的なキーワードに向き合い、現代詩歌の一つの達成を示している。この受賞が、自らのルーツを踏まえた「移民文学としての北海道文学」を重要なテーマとする氏にとって、今後のさらなる活躍の後押しとなると考えられる。また、現代短歌の評論やエッセイやアンソロジーなどの著作も発表するなど幅広く活動している。今後の一層の活躍を期待し、本賞を贈呈することが相応しい。